2020年4月21日火曜日

iFi Audio ZEN DAC レビュー

 2019年10月にiFi Audioより発売された。4.4mmバランス出力搭載据え置き型USB-DACとして中華メーカーより先に老舗大手メーカーが価格破壊を起こしたことで話題になった。iFiは製品の息が長い傾向にあり、中華メーカーほど矢継ぎ早に新製品を出さないため、本製品もおそらくは長く売られることになる。
 比較的コンパクトだが金属筐体で高級感がある。入力がUSB1つのみという点には注意されたい。複数の入力端子を備える機器とは異なりコアとしての運用は厳しい。
・ギャングエラー有り
 小音量時、アナログボリュームコントローラーとしては常識的な範囲内でギャングエラーが生じる。生じるのはノブ回転範囲の2割程度。高感度イヤホンを使用する際にはプレーヤー側の音量レベルを絞る等、対応する必要がある。

・ポップノイズ有り
 電源OFF時にポップノイズ有り。TRUEBASSやPOWER MATCHを操作した際にもポップノイズが生じる。特別大きな音ではないが、再生環境次第では問題になるかもしれない。
 無音状態が始まってから約12秒程度で省エネモードらしきものに入るようでほんの僅かにポップノイズが聞こえる。その状態から音楽再生を再開すると同様に小さなポップノイズが聞こえる。これらは非常に小さな音なので問題にはなり難い。購入後暫くはその存在に気付かなかったくらいだ。

・操作感
 ボリュームコントロールノブはクリック感の無いタイプで、程好い重さでぬるぬる動く。TRUEBASS及びPOWER MATCHボタンはしっかりとしたクリック感があるが、カバーをきっちり固定できておらず振動させるとカチャカチャと音が鳴る。

・バスパワーでも出力ノイズは比較的少ない
 ホワイトノイズは若干あるが、ハムノイズやデジタルノイズ等に関しては感じられない。PCとUSB3.0接続する分には、別途ACアダプタを用意する必要性を感じない。

・全出力端子に出力し続ける
 イヤホンを挿すとRCA出力が止まるといった機能は無い。全ての出力端子から出力し続ける。電源を入れる度にいちいちリモコンで出力先を切り替える煩わしさから解放される。なお、RCA出力及び背面バランス出力は可変・固定をスイッチで切り替えられる。

・現時点での最新ファームウェアではPCM再生時にオーバーサンプリング固定
 Ver.5.3C Cookies & Creamでは、PCM再生時に8倍オーバーサンプリング(352.8kHz/384kHz)が強制的に行われる。オーバーサンプリングの有効化・無効化を手軽に切り替える手段は設けられていない。この必然的な仕様の詳細については長くなるため詳しくは下記リンクへ。要はGTO(デジタルフィルター)に必要なためだ。
http://ifi-audio-jp.blogspot.com/2018/11/blog-post.html
 なお、旧ファームであるVer.5.3 Cookies & Creamを使用すればオーバーサンプリングされない。

・音質(Ver.5.3C)
 露骨にいじっている感じではない。GTOはどうも人の聴覚性能内で音を整えようとする設計思想のようで、リバーブやエコーにより積極的に加工する音作りとは違うようだ。足さず引かず、滲ませないといった感じか。解像感や音場の広さはそれなりで、目だった特徴はない。シングルエンド・バランス共にそつなく仕上がっている。
 TRUEBASSを有効化すればサブウーファーを効かせたような迫力のある音を楽しむことができる。また、POWER MATCH(ゲイン切替)を使用しても音質がほぼ変わらない点は好印象。ヘッドホンに合わせて気兼ねなく切り替えられる。

・所 感
 安いなりにしっかりとコストカットしてあるが、音質への妥協は少ないようだ。むしろシンプルな構成がノイズ原を減らしてすらいるのかもしれない。露骨に音作りされておらず、接続機器と音質面での相性問題を起こしにくいのは大きな利点である。
 私はFOSTEX T60RPという平面駆動型ヘッドホンのバランス接続を愛用しているのだが、50Ω・92dB/mWという鳴らし難さにも関わらず出力にはまだ余力がある。TOPPING DX3 Proではデジタルノイズの気になった超敏感イヤホンTFZ KIND EDITIONだが、ZEN DACでは多少ホワイトノイズが乗る程度でこちらも問題なさそうだった。
 小音量時のギャングエラーさえ許容できるのなら、良い製品なように思う。なお、Nintendo SwitchのUSB Audioには対応していない。