2020年5月15日金曜日

JPRiDE PREMIUM 2020 LIBERTY レビュー

 JPRiDEより2020年3月に発売されたフラッグシップモデルに位置するイヤホン。JPRiDE(ジェイピー・ライド)は株式会社エムピートレーディング(MP Trading Co., Ltd.)という「オーディオ機器等の企画・開発・販売」を業務内容とする日本企業が展開しているのだが、実態はおそらく輸入販売会社なのではなかろうか。過去にはQCY社のワイヤレスイヤホンを扱っていたようだ。技適の認証情報にそれらしい製品名があった。
 JRRiDEはステルスマーケティングに対し否定的・攻撃的な姿勢をアピールしつつ、大手ブロガーを通してダイレクトマーケティングは積極的に行うという…何と言うか…良い言い方をすればイメージ戦略に力を入れたブランドである。ちなみに当ブログは普通にAmazonで買って勝手にレビューしているだけなので一切接点がないことを明言しておく。イメージ戦略に力を入れているだけあってサポート体制において悪い噂はなく、メーカー1年保証は勿論、30日間の返品についてもおそらく真っ当に対応してくれるものと思われる。


<ドライバー構成>
  • 高・中音域用2BA
  • 中・低音域用2DD
 以上の片耳4ドライバー2ウェイ。
 高・中音域用の2BAはメーカー不明で、型番が確認できない角度で実装されている。中・低音域用DDも詳細不明な、自称「二重構造ダイナミックドライバ」。この2DDには少々疑問がある。
 メーカーが公開している3Dモデルを見る限り少なくとも対向配置や水平配置ではないことは明らかだが、同軸配置にも見えない。ユニットが2つあるわけではなく、振動板が2枚見えるわけでもない。KZ等の中華イヤホンによく見られる二重磁気回路DDによく似た構造。取扱説明書を見るとドライバー径は10.2mmとしか書かれておらず、口径の違う物を重ねているわけではなさそうだ。そして「デュアルコイルダイナミックドライバー」との記載がある。2コイルなら1DDなのでは?ただ、Amazonの製品ページには2 x 10.2mmダイナミックドライバとハッキリ書かれている。せめて図解に注釈を付けて欲しかった。これでは分り難い。
 4基のドライバとも書かれているし、2DDなはずなのだが…特許技術と書かれているので、私の知らない2DDなのかもしれない。


< 仕 様 >
  • インピーダンス:9Ω
  •  感   度 :93dB/mW
  • コネクタ形状 :MMCX
 インピーダンス9Ωのわりにノイズは乗り難い。音量は多ドラにしては少し取り難く、高出力DAPやヘッドホンアンプでの使用が好ましいが、必須というほどではない。スマホでも使用できなくはない。
 付属のケーブルは材質が銅であること以外情報が公開されていない。同社のPremium 1984 FREEDOMに同梱されているケーブルと全く同じ物。おそらくポリマーケーブル皮の高純度銅線と思われ、透明度の高いケーブル皮のおかげで銅線の光沢が美しい。端子の精度は良く、金メッキされている。モノは悪くなさそうだ。イヤーガイドがやや固く保持力が強いため、耳の形によっては合わない可能性がある。

< 外 観 >
 ハウジング素材はレジン。見た目はプラスチック製のクリアシェルにロゴマークが入っただけののチープなイヤホンという印象で高級感は無い。が、メーカーロゴがシールでない事、複雑な曲面、接合面の奇麗さから見る人が見れば悪い物ではないことがわかる…はずだ。装着感は好ましい。
 ノズル部分は金属製。接着剤の漏れが少し気になるが、逆に言えば接着剤が用いられてフィルターがしっかり固定されているということであり、両面テープで軽く固定されたフィルターより好ましい。安心感が違う。TRN V30ではフィルターが外れて耳の中に入りかけたという苦い経験がある。
 DDやBAは奇麗な角度で実装されていたが、配線がのたうち回っていたり、捻じられているはずの線がほどけかかったりしている。なぜこうも無駄に配線が長いのか…KZやCCAの方がまだ奇麗だ。
 MMCX雌端子部分に金メッキされている。中華イヤホンでは2万円前後の物でも銀メッキが多い。金メッキが大きく優れるというわけではないのだが、オーディオ機器では一般に金メッキの方が好まれる傾向にある。
 ノズル径は、太い部分が5.7mm、細い部分が4.7mm。
 ベントホールは一ヵ所。音漏れは少ない。

< 音 質 >
 見通しが良く歯切れの良い音。ただし音圧が強く聞き疲れし易い。
 高音域が強く、特にシンバル等の金属音が主張してくる。曲によってはずっとジャリジャリ鳴っていて耳障りに感じる。解像感はある。中音域はすっきりとしておりヴォーカルが聞き取り易い。低音域はタイトで量感に乏しい。
 定位に違和感があり、上側にある。音場はやや狭いが、窮屈に感じるほどではない。
 総評として、かなり思い切ったチューニングがされているため、一部のオーディオマニアを除きお勧めし辛い。

< 所 感 >
 メーカーはしきりにコスパの良さを主張しているが、PREMIUM 2020 LIBERTYにそれほどお得感はない。2万円台なら他に良いイヤホンはいくらでもある。とはいえ9Ω・93dB/mWという仕様に関心を持ったオーディオマニアは少なからずいるのではなかろうか。
 なお、JPRiDEの製品には同社製品に使える10%OFFクーポンが同梱されている(キャンペーン期間は不明)。他人へ譲渡して良いようなのだが、不特定多数に公開して良いものなのか判断に困ったので当ブログでは扱わないことにした。他のブログでクーポンコードを公開している所があったので試しに検索してみて欲しい。また、JPRiDEはBTイヤホンと有線イヤホンの同時購入割引を行っていることがある。金額が結構太いので、急がないのであれば様子を伺ってみても良いかもしれない。なお、セット割引は何故かBTイヤホンの製品ページにしか表示されていないため、2020 LIBERTYの製品ページだけチェックしていると気付けない可能性があるので注意されたい。