2012年9月26日水曜日

WST-UM3XRC-MRH-BLU レビュー

UM3X Monitor with Removable Cable Blue WST-UM3XRC-MRH-BLU
Westone “Made Right Here" キャンペーンイヤホン


 UM3XRCの限定版で、2012年6月に発売された。基本的にはUM3XRCと変わらず、イヤホン本体カラーと付属物のケースが変更されている。Monitor Vaultケースと言うと聞こえは良いが、プラスチックのチープなケースなので過度な期待は禁物だ。WST-MONITORVAULT-CLR/SMK/ORGという商品名で三千円前後の価格で売られているのだが、よほどのWestoneファンでもない限りこのケースに三千円も出す価値は無いように思う。軽くて頑丈、衝撃を軽減し、多少の防滴機能もある実用的なケースではあるのだが…この作りで三千円はないわ。

 UM3XはESシリーズの上位機種であるES3Xのユニバーサルバージョン、つまりWestone社のモニター向けコンシューマ機の最上位機種である。バランスドアーマチュアドライバ3基を搭載し、左右それぞれを3ウェイパッシブクロスオーバーネットワークにより高・中・低域を自然に分割している。UM3Xそのものは2009年5月に発売された古い機種なのだが、これはそのリケーブル仕様(ケーブル部分を交換出来る)となっている。UM3Xのケーブルは柔らかく細いため邪魔にならない反面、断線の心配が絶えないためリケーブル仕様による恩恵が大きい。ちなみにリケーブルにより音質が大きく向上したという話はあまり耳にしないので、純正ケーブルの品質はそれなりに良いようだ。

 音質はモニター向けの高級機というだけあって極めて分離度が高い。何処で何が鳴っているのか驚くほどハッキリと分かる。出力特性はフラットとは言えず、かなり元気な印象がある。例えばUltimate Ears社のモニター向けコンシューマ機上位機種である10pro(TripleFi 10)は2ウェイながら中・低域を2機のドライバが担当しているが、UM3Xの方が格段に元気に鳴る。それでいて全体的に破綻が無いのが驚きだ。中・低域が強いと言いたいところだが、厳密に言うと高・中・低の三分割で語れるほど単純な出力特性ではなさそうで、説明がとても難しい。元気に鳴っているのに確かにモニターライクなのだ。これはUM3X唯一無二の個性と言えよう。中毒性は極めて高い。ヴォーカル曲に特にお勧め出来る。

 音質面では賞賛に値するが、外観には少々難がある。クリアのプラスチック外装は少々チープに見えるし、LRを区別する赤と青の小さく丸い塗装が結構はみ出している。バリは無いし、フィット感も良いので実用に支障こそないものの、これはちょっと。米国コロラド州のコロラドスプリングで職人様が一つ一つ手作りしてくださっているはずなのだが…米国の広大な大地が寛大な心を育んでしまったのだろうか。まぁ妥協出来る程度なので良しとしておこう。

 ところで、大きな問題が一つだけある。私はこの製品をamazonのタイムセールにて格安で手にする事が出来たのだが、製品の状態に一部問題があった。
 スマートフォンで撮影したところ少し黄色の発色が良過ぎる気がしたのだが、下手に補正をかけるとフォトショップ加工疑惑が浮上するのでそのままアップロードしておく。画面中央にうっすら縦線が見えるが、これは撮影時に下にひいた白い紙の折り目なので気にしないで欲しい。手前の灰色のものが製品に同封されていた別サイズの交換用イヤホンチップで、黄色の物が問題の劣化したイヤホンチップ。イヤホンに最初から装着されていた物だ。右側の物は特に劣化が酷く、半日放置しても変形したままになっている。製品パッケージはビニールで密閉されており、このような劣化は起き難いはずなのだが…どうしてこうなった。amazonに問い合わせたところ交換品を手配してくださるとの事なので、依頼したところ届いた結果が画像にある二つのイヤホンである。amazon在庫分はどうやら他もこうなっていたいらしい。ちなみにこれはテックウィンド株式会社が流通させている国内正規品である。

 コロラド州コロラドスプリングの職人様がチューニングの際に耳に装着し、名前の変わりに遺伝子を刻み込んだ結果がこれであり、つまりは正常にチューニングされた正規品の証、とでもいう事なのだろうか?そんなわけない。梱包材と何らかの反応を起こしてしまったのか?あるいは再梱包品ないし修理再生品が流通時に混ざってしまった可能性が考えられるが、どうなのだろう。amazonに、代理店は販売店を通してのサポートしか行っていないようだからクレームを入れて欲しいと意見しておいたが反応が無かった。Westone製品大丈夫か。購入時には初期不良対応を渋らない店を選ぶようにしたい。

 気になるのは私がこの問い合わせをした後に更にタイムセールにこの製品が出品され、以降amazon在庫分が無くなってしまったという事だ。売り逃げたとも考えられるし、二度目のタイムセールはそもそも予定されていた事であり製品に問題が確認されたのでその後に販売を中止したとも考えられる。イヤチップ劣化の原因追求及びその結果の開示を怠ったのだから不信を買われても仕方がない。おそらく後者だろうとは思うが、いずれにせよ、amazonは初期不良時に交換・返金対応を全く渋らないので購入候補から外そうとは思わない。

 不幸な事に変色していたイヤホンチップは私の使うサイズであったため、新しいイヤホンチップを買い直す事にした。これだけ変色していると生理的に無理だ。使う気になれない。しかしタイムセールで格安で購入出来たため、イヤホンチップ代を考えても十分お得な買い物になった。イヤホンの音質も甚く気に入った事だし、満足度は高い。暫くは10pro、IE8、UM3Xのローテーションで楽しめそうだ。所謂イヤホンスパイラルは一段落したと言えよう。